「食」と「米寿」の話 「金箔入り」食材・献立を考える。 男女ともに世界1,2位を誇る日本人の長寿自慢をもってしても、それを超える長寿祝いである「米寿祝い」。そのキワードーとなる色は金茶色ですが、これにちなむものとして最近、そのバリエーションが広がっているのが金箔を使った食材や献立です。 もちろん、これまでも和菓子や酒類などに金箔を散らしたりすることはあったのですが、日本人の寿命が延び続け、米寿祝いの需要が高まるにつれ、金箔を使った食材も増えるなど、金箔の登場がグンと増えてきているのです。 しかし、この金箔という「素材」。見た目にも縁起がよくて喜ばれる反面、本当に口にいれて良いものかどうか不安を感じてしまう人も少なくないようです。そのため、せっかく金箔をあしらったお料理を米寿のお祝いの席に用意したのに、主役のおじいちゃん・おばあちゃんがなんだか複雑な顔…というのでは、お祝いされる方もする方も不本意です。そこで、金箔についてちょっと豆知識。 栄養学的には毒にも薬にもならず。でも。 まず金箔を口にいれることの安全性ですが、これは「金」に対する金属アレルギーがある方を除けば、まったく問題ないというのが正解といってよいでしょう。また、純度の高い金はもともと金属アレルギーを起こし難い物質ですから、その点でもあまり心配をする必要はないでしょう。ただ、ふだんから金属アレルギーが強い方の場合、心理的な抵抗は否めませんから、こうした方には、金箔入りの献立や食材は、心配りや思いやりとして避けたほうが無難です。 なお、金属アレルギー等の問題のない方の場合、金箔は食べても無害です。というのも、実は「金」は胃酸に溶けない物質。とけないということは人体に吸収もされません。つまり、安全性や栄養学から言えば、“毒にも薬にもならない”のが本当。ただ、その見た目は確かに華麗で美しいものです。日本古来の会席料理をはじめ、見た目を重要視する献立であれば、これはなかなか大きな魅力。しかも、見た目の縁起の良さが気分を盛り上げてくれるなら心理的な効果も大。おじいちゃん・おばあちゃんもご長寿意欲をかきたてられ、ますますお元気で過ごしていただけるかもしれませんね。 米寿とトマトの関係 「米寿とトマトの関係」と一言いってしまえば、米寿にはトマトを食べれば良いという言い伝えでもあるのか、はたまたトマトが米寿の人の結構に良いという話か、などと思ってしまいますよね。でも、ここでご紹介する米寿とトマトの話は、そうではありません。 実は、「米寿」という名のトマトが存在するというお話なのです。しかも、正確にいえば、その名は「強力米寿」。なんとトマトの一品種の名前です。特長は、その名の通り樹木自体にスタミナがあり、生命力が強いこと。そのため素人でも栽培しやすく、家庭菜園におすすめの品種としての販売されているようです。 もともと夏青果であるトマトは生のままで食べれば、夏の陽ざしにほてったからだを自然なかたちで冷やしてくれます。しかし同時に、面白いことに熱を通したトマトには体を温める作用があるとか。つまり火を通してトマトソースなどにすれば冷房対策や、寒い季節にからだを温める料理がつくれるということです。そこで一案、「強力米寿」トマトを1年以上前から栽培しておき、米寿祝いの日に、収穫した「強力米寿」を使ったお料理づくりをするというのはいかがでしょう。また、米寿祝いの日に「強力米寿」の栽培を開始、あとは毎年、誕生日ごとの収穫を楽しむというのも、おじいちゃん・おばあちゃんの張り合いになっていくかもしれませんね。 米寿祝いいろいろ どこか違ってどこか同じの祝い方 長寿祝いには、一般的なお祝いのかたち以外に地方色豊かなものが多彩にあります。たとえば、子どもから青い座布団を贈るというのも東北地方の米寿祝いのかたち。ところが、これが中国地方となると、座布団の色が紫色に変わります。品は同じなのに、微妙な色違い。いったいこの違いはどこから生まれてきたのでしょうね。 また、米寿を迎えられる人の手形を押した色紙に、その方のお名前と「八十八」の数字を書き入れて配る…という習慣は東北地方と京都辺りの両方にあるのですが、東北地方はこれを米櫃に貼り、片や京都では部屋の中に貼ったり神社に奉納したり…。 こうした、どこか同じなのだけど、どこか違うというお祝いのかたちは他にもあり、一般的には還暦のお祝いで贈られる赤いちゃんちゃんこを米寿で贈るのは群馬県に残る習慣。一方、北陸のほうでは、赤い…ちゃんちゃんこではなく赤い襦袢に赤い頭巾を米寿祝いに贈ります。 長寿の福分けに配り物いろいろ 長寿の『福』をご近所に配るという意味合いなのでしょうが、上記の手形と同じようにさまざまなものが長寿祝いの際にはご近所に配られます。これは地方によってバリエーションがあり、指くらいに太さの竹を7寸(20cm程度)ほどの長さに切ったもの、火吹き竹、とかき棒、紅白の餅、手ぬぐい、茶袋、赤飯、物差し…なお、これらを配る理由は、地方によってはその謂れが伝えられている場合もあるようですが、どうやら歴史学的には、正しい理由は不明のようです。 もっとも、大切なのは理屈よりも、お祝いをする気持ち。その気持ちの表し方として、鹿児島の一部地域では、子や孫、ひ孫などが米寿祝いの席で、「親代代、子代代、孫代代、先祖代代」と掛け声をかけつつ場内をまわるとか。これもまた、地方色豊かな長寿祝いとして残していきたい風景ですね。